2017-01-01から1年間の記事一覧

停滞という幸せ

はじめに こんにちは。初めまして(?)雨間です。アマアイと読みます。雨間寂だったり、雨間ジャックだったり、雨間単体だったりで小説を書いています。このアドベントカレンダーを作ってくれた漣君と同様、筑波大学の文芸部に所属しています。 小説を書き…

メリー・クリスマスは遠く

トナカイとサンタの黒い、がらんどうの瞳が僕を見つめている。オマエ、ソノママデ本当ニイイト思ッテル? 適当にアフレコしてみて、いったい彼らは何のことを言っているんだろうと自問自答した。 「ねえ、ちょっと」 先輩が僕の腕をつついた。 「なにぼーっ…

秋風に手を振って

良樹がこっちに帰っていることを知ったのは、彼が東京に戻る直前だった。メールが飛んできて、可能な限り早く駆け付けたけれど、結局会えたのは新幹線の待ち時間になってだった。彼は駅の横のカフェで私にはわからない専門書を広げていた。 「ごめん、お待た…

夢うつつ

ドアベルが軽やかな音を立てて来客を知らせた。薄明るい室内を見渡すと、ほかに客はいないようだった。まっすぐに視線を戻すと、グラスを拭っていたバーテンダーと目が合う。彼はわたしに微笑みかけると、すっとその後ろへと目を走らせた。つまり、真っ暗な…

言葉の遣い方

下駄箱のところで真理亜に出くわした。待っていたの、と聞くと首を振る。じゃあ偶然? と尋ねると首をひねる。よくわからないけれど、無口な真理亜から事情を聞きだすのも面倒なので、一緒に帰ることにした。 靴を履き替えて外に出ると、太陽は既に姿を隠し…

ヨシノが死んでよかった

ヨシノが死んだと聞いたとき、よかったと思った。ヨシノはサクラシリーズの最後の一人だった。サクラシリーズは日本の研究所由来の人工生命で、誰よりも人間たちに心を傾け、親身に寄り添い、そして彼らが死に絶えたのに耐えられず倒れていった。ヨシノも例…

何もない場所を確かめに行く

ヒールと金属の板がぶつかりあって甲高い音を立てる。カンカンカン。 一段、二段、と数えていた時期もあった。 力の続く限り走り続けた時期もあった。 でもどちらにしたって、結局階段は終わらないし、鉄塔はどこまでも伸びていくのだ。それがわかったから、…

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雨間です。 ブログを書くのは初めてですがブログとして使う気があまりありません。 小説(や、小説みたいなもの)の置き場にしていこうかなと思っています。 雨間