月イチ
大毅のアパートの隣にはガストがあって、そこが僕たちのたまり場だった。僕たちは最初そこで履修の組み方の相談をした。推奨される時間割は提示されていたものの、大毅はどこからか先輩の過去の時間割を入手してきて、これが楽単で、と指差しながら見せてく…
何処かに迷い込む話を短歌にしました。 ※blogで公開したのは11月ですが、初出はTwitter(2023/10/31)です。10月に3泊4日で台湾に旅行してきました。背景の写真はそのときに撮ったものです。私が泊まった部屋は5階で、窓からはホテルと似たようなビルが続いて…
クソみたいな親のもとで育った子供は、人間になれない。 つまり私も、メリアも、人間にはなれなかった。ということ。 樋崎誠太郎は世間的には立派で成功した人間に見えるかもしれないけど、残念ながらまともな父親じゃなかった。クソみたいな男がお見合いで…
その高校で、K大学に合格したのは私と村中だけだった。嬉しくはない結果だった。教室の真ん中で、先生にバレないメイク方法とか、男と付き合ったり別れたりすることばかり話している人間と相容れないことなんて、はっきりわかっていた。何より村中はバレー…
逃避行をテーマに短歌を詠みました。 6月に読んだ主な本 ・春の窓/安房直子 など
たとえばショーケースの中に並べられた食品サンプルがあるとする。スパゲッティでもハンバーグでもフルーツが沢山乗ったパフェでもいい。とても美味しそうで、食欲をそそられる。貴方はそれを食べたいと思う。それを――つまり、サンプルではなく、本物を。結…
こんにちは。雨間です。5/21開催の文学フリマ東京36に参加してきました。既刊の「Living with Monsters 人外×人間BL小説短編集」や、「Kneel to ME for YOU -Dom/Subユニバース短編集-」を頒布してきました。有難いことに「Kneel to ME for YOU」はセット買…
こんにちは。雨間です。4/2開催のJ.GARDEN53で、新刊「Living with Monsters 人外×人間BL小説短編集」を頒布してきました。通販もしていますので、よろしくお願いします。5/21開催の文学フリマ東京36にも持っていきます。 表紙メチャクチャいいですよね。サ…
籍だけ先に入れて、結婚式は落ち着いてからにしよう。そう決めたのは自分だったけれど、夫婦になるというのがこんなにもあっけなく終わることだとは不思議だった。記念日だからととったホテルの窓から、ぼうっと夜景を眺めていた。 好きな女と結婚して、夫婦…
七十六回目の人生の、十九歳と五ヶ月十五日三時間とんで十秒生きたとき、あたしは札幌の街を歩いていた。隣にはゆっちゃんがいて、かじかんだ手を吐息で温めていた。ビルの灯りと街灯に照らされた歩道に人通りはほとんどない。ただ車道を車が行き交っている…
日本史足利も後醍醐も死んでるし、今は先生のことを教えてほしい物理「点PとQは等速で進み、距離は縮まらない」がアンサー英語「Of course!海外旅行は任せてよ」のピースサインは化石になった数学平均値よりも無個性な中央値 埋没していく安心感=Q現代文ご…
私の仕事は人を殺すことだ。 主に、若く、考えなしで、根拠のない自信に溢れていて、スリルに飢えている、そういう男女を殺すことが多い。私は彼らを殺す方法を千以上考えてきたし、彼らを追いつめる殺人鬼を五十以上、彼らを恐怖させる怪物を百以上生み出し…
眩しさを感じて、あたしという意識が緩やかに浮上していく。遠くから、お兄様の声が聞こえる。 「エナ、……朝だよ。起きて……」 「おはよう、お兄様……」 瞼をあけた私の瞳が焦点を結ぶと、穏やかに微笑むお兄様がいる。 「今日の朝ごはんはパンケーキだよ」 「…